塩分を摂取すると血圧が高くなる仕組みを知ろう
血圧は高すぎても低すぎても、体にはよくありません。正常値の範囲におさまるよう、日頃から気をつけることが健康のためです。ではどうやって正常値に持っていくのかということで、変動する要因について学べば効果的な取り組みができます。
たとえば、高血圧になるのは塩分を摂りすぎが原因だというのはよく知られた話です、その仕組みまでは、詳しく説明できる人は少ないでしょう。まだ正確なことが解明されていませんが、その仕組みでは浸透圧が重要な鍵になると考えられています。
そもそも人の体の中にある血液やリンパ液と言った体液には、塩化物イオンとナトリウムイオンが含まれています。正常な状態では、血管の中と外の体液でナトリウム濃度に大きな差はありません。
しかし、味噌汁や漬物などを塩が入った食べ物を摂りすぎると、血液のナトリウム濃度が高くなります。すると、浸透圧で水分が血管の中に入り、血管の中と外のナトリウム濃度を同程度に保とうとします。
水を補給することで、ナトリウム濃度については薄まりますが、血液の量は増量します。そうなれば、血管はこれまでと同じ広さでは血液を流すことができません。なのでポンプの役割を果たしている心臓は強い力で血管を押し広げて、増えた血液を流せるようにします。
食塩感受性と食塩非感受性
ここまでは従来からわかっていることですが、さらに食塩感受性と食塩非感受性という2つのタイプによってより詳しく仕組みを説明できることがわかりました。
この感受性というのは、塩分の摂取量が血圧の上昇に相関関係にあることを意味しています。食塩感受性は遺伝で引き継がれることもありますし、年齢や生活習慣などの影響でなることもあります。
この食塩感受性についての説明でも、浸透圧が重要です。塩分を摂取して血中のナトリウム濃度が高くなると、浸透圧により水分が血管に入り込み濃度を下げます。でも体には水分で薄めることなくナトリウム濃度を正常に保つ方法もあり、そこで活躍するのが腎臓です。
腎臓が正常な状態であれば、血中のナトリウムは腎臓が吸収してくれるので水分を補給しなくてもなんとかなります。ところが食塩感受性の人はこの腎臓の働きに障害がでてしまい、ナトリウム濃度の調整ができません。
その原因は何かというと、塩分を摂取すると腎臓の交感神経が亢進して、ナトリウムを排出する機能が働かなくなるからです。この食塩感受性の人は、日頃の食事で醤油や味噌を減塩にしてみたり、料理の味付けに使う食塩の量を減らすことで健康を維持できます。
では、逆に食塩非感受性の人は、しょっぱいものを気にせず食べてもよいのかというと、塩分が増減しても血圧に変化が出にくいので、食塩感受性の人ほどには厳しい制限は必要ありません。
ただし、摂取量が多すぎると他の病気を引き起こす可能性はあります。たとえば、コレステロール値とも深い関わりがありますが、血栓ができて脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす可能性があります。なので、健康のことを考えるならば厚労省などで推奨されている量に抑えたほうが良いです。
なお、時間帯によっては血圧が想像以上に高くなることがあります。それは食事を摂る時間帯が影響をしています。というのも、人間の体というのは時間帯によって体調が変化します。当然ながら、血圧もまた変化することのひとつであり、朝8時頃から徐々に高くなり、ピークを迎えるのは午後2時頃です。
もし、そのピーク前に塩を大量に使った料理を食べれば、時間をかけて体に吸収されていきピーク時には血中のナトリウム濃度が通常よりもかなり高くなる事がありえます。そうなると意識を失うことがありますし、血管がもろくなっていれば破裂する恐れもあります。そういった問題が起きた時、周囲に人がいなければそのまま命を落とす可能性もあるので気をつけなければいけません。
自分が食塩感受性か食塩非感受性か調べるには
では、自分が食塩感受性か、それとも食塩非感受性かを知りたいときにはどうするのかというと、血液に含まれる遺伝子検査で調べる方法があります。ただ一般的にはその検査をすることは少なく、減塩をしたときの反応を見ます。食塩摂取量については、尿検査で調べられます。繰り返し検査をすることで、日常的に自分の食塩摂取量が多すぎるどうかを確認できます。
もし食塩摂取量が多すぎるということであれば、食事の見直しをして調味料を変えてみたり、食事の量を調整して減塩をしていくことで改善できる可能性があります。ちなみに成人男性だと1日の食塩摂取量が8 g未満、成人女性は7gが目安ですが、食塩の制限が必要なときには6g未満にすることが推奨されています。それだけの量だとが薄すぎるかもしれませんから、出汁の旨味などで味を補うと良いでしょう。
そういった試みをしても、特に変化がでなかったらそれは食塩非感受性ということです。食塩非感受性の人は、たんぱく質の一種であるアンジオテンシンⅡという物質が影響を及ぼします。なので治療では、アンジオテンシンⅡの働きを阻害する薬を飲めば改善できます。